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目指せCO2削減?
消費エネルギーをCO2に換算することが当たり前になり、「日々、CO2削減に励むこと」が美徳とされる世の中になってきた。だが、前真之氏はそうした自己犠牲的アプローチは長続きしない、とみる。
はじめに断っておくが、筆者は地球温暖化そのものに疑義を持っているわけではない。
「地球温暖化はウソ」とする「地球温暖化懐疑論」なる書物がちまたにあふれているが、そうした懐疑論のほとんどはデータの一部のみを取り上げるなど、誤った分析と誤解に基づいた「誤診」であることが明らかになっている。(IR3S/TIGS叢書No.1「地球温暖化懐疑論批判」http://www.ir3s
筆者は、CO2を減らすことは「絶対に必要」と考えており、懐疑論にくみするつもりは毛頭ない。しかし、「CO2削減そのもの」を目的にするべきではないと考えている。
CO2は計算できる?
そもそもCO2排出量は、算出すること自体が容易ではない。石化燃料をそのまま燃やす場合には、燃料の種類ごとに出てくるCO2はほぼ一定である。図1に見るように、石炭は「炭素の固まり」なのでCO2排出量が大きく、最も避けるべき燃料であることは明らか。逆に天然ガスは水素分が多いのでCO2排出量はすくなく、環境にやさしいとされる。ココマデはごく簡単。
ややこしいのは電力である。ご存じの通り電力事業者は、化石燃料はもちろん、水力・地熱や原子力など「CO2排出がない」とされるエネルギー源までも組み合せて発電を行っている。最終的に電気になりさえすれば、もとのエネルギー源は何でもよい。そして、このエネルギー源の「ベストミックス」のやり方は、地域の電力会社によって大きく異なっているのである。
各電力業者が実際に出したCO2は図1の「実排出係数」になる。最小の関西電力と最大の沖縄電力とでは、同じ電力量当たりのCO2排出量には実に3倍近い開きがある。これは、関西電力は原発比率が約50%と非常に大きく、逆に沖縄電力はほとんど石炭に依存しているからである。同じだけ電気を使っていても、地域をまたぐとCO2排出量は大きく変化してしまうことになる。
カネの切れ目で排出権も
さらにややこしいのが、「調整後排出係数」の問題である。これは何かというと、電力事業者が国内や世界から「CO2排出権」を購入してきて、実排出量から「差っ引いた」値のこと。CO2排出権とは、CO2を努力目標に以上に削減できた場合、その「余剰分」を売却できると京都議定書で認められたものだ。つまり、他人の削減実績を購入することで、「自分の分をチャラに」できることになる。
「実排出量」と「調整後排出係数」の差が大きい電力事業者は、「電力は省エネCO2」という金看板を守るために、CO2排出権の購入にかなりの金額を海外に支払っていることになる。しかし今後、こうした排出権の購入は非常に難しくなるのは想像に難くない。まさに「カネの切れ目は」である。
おまけに原子力の稼動比率が低下していくなか、古い(低効率な)火力発電所を再稼働して石炭をバンバン燃やせば、「実排出量」が激増するのは不可避。実は「実排出量」は年度ごとでも大きく変化している。このように、CO2排出量は地域や年度によって大きく変化してしまう、「当てにならない」数字なのである。
まずは「省コスト」から
先の震災前までは京都議定書の評価期間(2008年~2012年)ということもあり、CO2削減が「金科玉条」であったが、今となっては「忘却の彼方」である。
ズバリ言って、ほとんどの人には「省エネ」も「省CO2」も所詮はオマケ。エネルギーが「何MJ」だとかCO2が「何kg」などと言われて、ピンとくる人がどれだけいるだろうか。肝心なのはただ一つ、「省マネー」である。
だから、おカネのチカラを直視し、生かすべきである。「何円」であれば、誰でも即座に理解できるのだから。
省エネの調査をしていると、電気・ガスの検針票を1年分以上保存している人が少なくないことに驚かされる。「エネルギーの恩恵(快適性)」記号⇔「コスト(光熱費)」のバランスは厳しく精査されているのだ。この「人的エネルギー」を生かさない手はない。その「省コスト」の努力がいつの間にか「省エネ」につながっている・・・。これこそ、みんなの幸せにつながる「王道」ではないか。
繰り返すが、「省エネ」も「省CO2」も絶対に必要。しかし、「自己犠牲的」なアプローチは結局、長続きしない。「当たり前に」できる「自然な」アプローチこそ、今の疲幣しきった日本には求められているのではないだろうか。
前 真之:東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授
(日経アーキテクチュアNo.964 P82.より引用) 』
住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』
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