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省エネよりゼロエネ?
再生エネルギーへの関心が高まってきた。「ゼロエネ」という言葉の広がりはそれを象徴する。しかし、ゼロエネだけを目的にすると、住宅のバランスがおかしくなってしまうと、前真之氏は危惧する。
ゼロエナジー・ハウス(ZEH)というキーワードをよく耳にするようになった。今までは「省エネ」という言葉がもっぱらだったが、「ゼロエネ」の方が何やらすごそう。実際はどうなのだろうか。
そもそも、慣れ親しんだ「省エネ」とは何を意味するのか。大辞泉(小学館)によると「石油・電力・ガスなどのエネルギーを効率的に使用し、その消費量を節約すること」とある。
1979年に制定された「国内のエネルギーの使用の合理化に関する法律」、いわゆる「省エネ法」の目的は、「内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため・・・」と、「国家の安全保障」の色合いが非常に強い。1973年のオイルショックを契機に、石油依存から脱却することが最優先であったことがうかがえる。
しかしながら、オイルショックを直接経験した世代はいざしらず、(自分も含めた)その後の世代にはむしろ、Wikipedia(インターネット上のフリー百科事典)の説明の方がしっくりくる。「日本の省エネは、オイルショックのときにエネルギーの安全保障の面から始められた。1990年代以降、地球環境問題、特に温室効果ガスの削減が社会問題化して以降、その手法の1つとして重要なものとなっている」
省エネは時代とともに変化
つまり、省エネは時代ごとに意味を変化させてきた。そこに共通する理念とは、「同じ社会的・経済的効果をより少ないエネルギーで得られるようにすること」になる。
これを住宅に当てはめると、「同じ生活レベルをより少ないエネルギーで」となる。高断熱・高気密化や設備機器の高効率化は、まさにこれに当てはまる。前回論じた太陽熱の給湯や暖房への利用も、必要なエネルギーを削減するため省エネに含まれることが多い。
「省エネ」は、意味は変われど社会のニーズに応えながら長い時間を生き延びた。「タフで長生き」な言葉ということができる。
ゼロエネの行き着く先は?
ただし、省エネ技術ではエネルギーの削減はできても、最低限必要なエネルギーはどうしても残ってしまう。地球環境問題への関心が高まる中で、さらに進んだ形として「ゼロエネ」が登場してきた。自然界から循環的に得られるCO2などを排出しない「再生可能エネルギー」を利用することで、省エネでは削れない部分のエネルギーを賄おうとするものである。
「再生可能エネルギー」はいくつか種類があるが、こと日本を念頭におくと、現実的なのはやはり太陽光発電ということになる。
最近は、この「ゼロエネ」が注目され、省エネは「もう古い」といわんばかりである。現状の「ゼロエネ」住宅では、概ねしっかりした「省エネ」手法が尽くされた後に最低限を再生可能エネルギーで賄っているので、両者は「共存」している。だから、「省エネ住宅の進んだもの=ゼロエネ住宅」程度という認識が一般的ではないだろうか。
しかし、これはあくまで現状の話。再生可能エネルギー(≒太陽光発電)が「高くつく」ので、むやみに載せられないからまずは省エネせざるをえない。しかし、本当に(政府目標のような)低価格化が実現すれば、既存の多くの省エネ技術よりも安価になる。その場合、省エネが再生可能エネルギーか、どちらかだけを選ぶことが予想される。ほとんどの家庭のマイホーム資金は無尽蔵ではないのだ。
家は公器、王道は省エネ
結局、ゼロエネ自体を目的にしてしまうと、「家は人が住む場所」という事実を忘れがちになる。家は太陽光発電を載せる単純な「台」ではない。それに、太陽光発電で収支が差し引きゼロになったとしても、結局は系統電力(と発電所)なしには成立しないのだ。
バイオマスがCO2を出さないからといって、断熱・気密を行なわずに薪ストーブに頼るのも考えもの。いくら薪を燃やしても高断熱・高気密住宅のようなムラのない温熱環境は得られないし、そもそも膨大な薪を割るのが大変である。
今回の災害で、高断熱の家では暖房無しでも凍えずに済んだ、太陽熱温水器で停電でもお湯が使えて助かったという声を聞く。このように「省エネ」は住宅の質を上げて生活水準を支える、人にやさしい徳のある「王道」である。家は人の住む「公器」であることを、ゆめゆめ忘れる事なかれ。
前 真之:東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授
(日経アーキテクチュアNo.963 P70.より引用) 』
住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』
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