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屋根に太陽光を載せるべき?
ほとんどのエコハウスの屋根には太陽光発電システムが載っている。果たしてこの選択は常に正しいのか。東京大学の前真之准教授は、必ずしも載せればよいとは限らないという。
第10回と第11回で、住宅における太陽光発電について考えてきた。そして、今回の結論は「条件のよい場合はシッカリ載せる。悪条件ならさっさと諦め、他を考えるべき」。以下、その理由を説明していきたい。
自立といってもパラサイト
人類は化石エネルギー中毒から脱却して太陽エネルギーに戻る必要に迫られている。人類が夜型の生活を続ける以上、昼の太陽エネルギーを夜のために「貯めておく」必要がある。
昨今話題の住宅用蓄電池は、自宅に金庫をつくって「自宅預金」するようなもの。
昼間に太陽光の電気を貯めておき夜の需要をまかなうことで、自然エネルギーによる「完全自立」が可能。ただし、蓄電池は高度な技術とレアメタルを大量に必要とするため非常に高価。将来はともかく、現状では現実的でない。
より現実的で普及しているのは、つくった電気を自宅では貯めずに外の系統に売電する「マーケット」型である。いわば、昼に稼いだお金をせっせと株式マーケットにつぎ込んで株を買い、夜に株を売って生活費にまわすようなもの。うまくいけば、「夜に必要なお金<昼間に買っておいた株」となって、差し引き「お釣り」がくる。自宅に現金(電気)を置かずにすむので、金庫(蓄電池)が要らない。電気は「貯めるのは難しい」が「送るのは簡単」なので、理にかなった「自立」のやり方である。
ただしこのやり方は、夜に誰かが電気を供給してくれないと成り立たない。つまり、火力発電所が不可欠となり、化石エネルギーへの依存を断ち切れない。結局は「パラサイト(寄生)」なのだ。
ライバルは「田んぼ」
さらに大事なことは、「マーケット」では過酷な競争が待っているということ。太陽光でつくった電気をひとたび系統電力に接続してしまえば、他につながっている発電手段は全て競争相手。電気は搬送ロスが小さいので、自宅で発電しようとはるかかなたの発電所で発電しようと全く同じ。一度つながった電気に「色はない」のだ。
「太陽光の電気はスペシャルだ」と言われるかもしれない。しかし、「太陽光の電気だっていろいろ」。工場の広々とした屋根や広大な空き地に、「メガソーラー」と呼ばれる大規模な太陽光発電施設が次々に登場している。海外では砂漠に敷き詰めているケースも多いが、強い日射しがあり雨が少ないのだから非常に理にかなっている。
つまり、太陽光発電は津々浦々どこにでも付けてよい。そして、太陽光パネルは製造時に大量のエネルギーと希少物質を消費するので非常に高価。だから、せっかくつくったパネルには「目一杯」働いてもらうため、できるだけ好条件の場所に付けるべきである。
結局は系統電力に依存してしまう以上、家で電気を使うからといって家で発電する必要はない。今まで住宅に太陽光発電が載ってきたのは、政策的な特別扱いの結果に過ぎない。著名な起業家が提唱している「休耕田で太陽光発電」のビジネスプランは、まさにこの点を突いている。
あえて住宅に載せるからには、田んぼにギッシリ敷き詰めるのに負けないくらい効率よく発電できなければならない。
太陽光は、設置の方位・傾斜で発電効率が大きく変わる。周辺建物や樹木・電線などのわずかな影でも、出力が大きく低下する。そのため、本当に太陽光発電に向いている屋根は多くない。だから敷地条件を見極め、好条件なら「シッカリ載せてシッカリ発電」。中途半端は禁物。「ライバルは田んぼ」である。
太陽熱に必然あり
そして、太陽光発電が無理そうなら、さっさと他の自然エネルギー利用を考えるべき。例えば熱は、電気とは全く反対の特性を持っており「送るのが難しい」。熱は送る際のロスが大きいので「新鮮なうち」に使う必要がある。だから太陽エネルギーをひとたび熱に変換したら、その熱は家の中で使い切るしかない。つまり、太陽熱システムは田んぼに置いても仕方ない。家に「置かざるを得ない」必然があるのだ。
一方で、熱は「貯めるのが簡単」という大きなメリットがある。昼間の太陽熱を夜の給湯・暖房に回すことは、タンクの水や基礎のコンクリートを使えば至極容易。屋根の集熱パネルにしても、太陽光とは比較にならないほどシンプルで安価なので、適当に付けても気にならない。さすがに太陽熱で照明やパソコンを動かすことは無理だが、給湯・暖房を賄えれば必要な電力は相当少なくなって、「完全自立」に大きく近づくことができる。手軽で割の良い話ではないだろうか。
以上3回にわたって、太陽光と太陽熱の比較を行って来た。一つの技術だけを見てみていては本質を見失う。「環境技術」についても「批判的」な比較検証をオススメしたい。
前 真之:東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授(日経アーキテクチュアNo.962 P80.より引用) 』
住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』
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