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隠せばハッピー?
「美に用は無縁のもの。家の中で最も有用な場所はトイレである」。モダン建築における「レス・イズ・モア」の美学を前にしては、空調や給湯といった忌まわしい設備などに、居場所などあろうはずもなかった。
エアコンは隠すな
エアコンは、なぜかすぐ隠されてしまいやすい。特に和室では、壁にガラリを設けて屋内機を押し込んでしまったケースをよく見かける。
見た目はスッキリであるが、これで暖房をしようとすると空気は下に吹き出せず、暖かい(軽い)空気が上に滞留するだけで、全く暖まらない。
暖房をきちんと行なうためには、エアコンは「飛び出さざる得ない」のである。
さらに屋外機。あまり見栄えのするものではないが、これが動くのは、ヒートポンプが空気の熱を稼いでいるから。省エネのためには不可避である。この屋外機こそ、「心臓」であるコンプレッサーを内蔵し熱を作り出す「主役」。見苦しいからといって囲っては夏の排熱・冬の集熱に必要な空気の流れを妨げてしまい、性能が大幅に低下する。
ちなみに、1つの屋外機に複数の屋内機をぶら下げられるマルチエアコンは、一般に形式も古く割高、おまけにエネルギー効率も低い。「屋外機を1つにしたい」だけの理由で安易に採用しないこと。
「床暖房ラブ」の真実
エアコンとは対照的に、設計者に好まれる暖房といえば床暖房をおいて他にない。音や風を起こさず、温度ムラのない良質な温熱環境を作ることができる。しかし、設計者にとって最大の魅力は、「設備を完全に隠蔽できる」ことに尽きるのではなかろうか。モダンリビングの必須アイテムといえる床暖房、実は弱点をいくつも持っている。
まず、加熱能力が低く立ち上がりに時間がかかる。床暖房による空気加熱は「自然対流」によるが、これは第4回で扱ったように加熱量が制約される。床表面温度を上げれば加熱量を増やせるが、身体に直接触れる床暖房では低温やけどのリスクがあり、それも困難。結局、その加熱能力は最大でも1m2当り200W程度。放熱面の敷設率(通常60~70%)を考えると、10畳(18.6m2)では2000W以下の加熱量しかならない。強制対流方式であるエアコンやガス・石油ファンヒーターが6000W程度に比べると、3分の1程度の能力しかないことになる。
さらに、床暖房は放熱パネル下面や配管からの熱ロスが大きく、また熱源効率に限界があり、エネルギー効率が低くなりがちである。省エネに床暖房を行なうには、効率的な熱源や放熱パネルの採用・床下や配管の断熱強化など、注意深い設計と施工が不可欠である。見えないからと手を抜いていると、「床下に潜ったら暖かくてビックリ」になりかねない。
好都合な電気ヒーターは「×」
電気ヒーター式の「電気床暖房」「電気温水器」はとっても魅力的。メンテナンスフリーで抜群に長寿命、しかも安価。設置は電線をつなぐだけ、熱焼式やヒートポンプ式のように外気に接する必要もない。完全に無音・無臭で、どこにでも隠しておける・・・。やたらと好都合なのだが、実は貴重な電気エネルギーをただ黙々とジュール熱に変換してしまうため、エネルギー効率は最悪。電気で暖房・給湯をする場合には、空気熱を集めて効率を稼ぐヒートポンプ式を絶対に選ぶこと。ヒーター式の魅力には、くれぐれもご用心。
設計が設備を飲み込むために
ある有名自動車メーカーのモットーは、「全ての細部が必然」。設備の形態は物理の必然に真正面から向き合った結果の産物。なぜ「見える」のか、「出っ張っている」のか、「音がする」のか・・・。そこに不思議や魔法は存在しない。「毒を食らわば皿まで」の気持ちで、今一度設備に向き合われてはいかが。
前 真之:東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授
(日経アーキテクチュアNo.958 P85.より引用) 』
住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』
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