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エコハウスのウソ (第8回)

 通風はクール?

 

エコハウスの設計で最重視されているのが、この「通風」。建築の平面・断面図の上に踊る、華麗な「風の線」は、もはやお約束である。この連載で繰り返し論じてきた吹き抜けも、まさにこの「通風のため」。そんなに通風はクールなのだろうか。

 

クールな空気を探せ

 通風の目的は、主に2つである。

1.         人体周りの気流が放熱を促進し、人に高い空気温度を許容させる。

2.         室内でこもる熱を排出し、室温を外気並みに抑える。

1.は第1回のオルゲ―の図に示された、比較的理解しやすい効果。ある程度の風速が必要だが、扇風機やシーリングファンで補うことも可能である。2.の効果も、家電などの内部発熱が増加している最近の住宅では特に重要である。ただし、「室温を外気温度並み」にするのがせいぜいなのは、当然ながら要注意。つまり、「外に涼しい空気」がなければ意味がないのだ。

農村のように広い敷地に緑が豊富ならば、外気は涼しく冷されている。しかし現在の市街地の空気は、道路のアスファルトや車の排ガス・エアコンの排気などで加熱・汚染された、「ご遠慮したい」シロモノ。まずは本当に通風するべきか、敷地を冷静に分析することが肝心である。

 

 

 まず間隔、次に平面設計

 周辺環境が好適であれば、次に建物の配置と平面・断面計画を行なうことになる。いくつかの条件で、数値流体計算で検討した結果を図2に示す。

 ケース1と2は、周りに何も建っておらず、通風には理想的な「大草原の一軒家」。風が建物によく当るため、風上・風下の両方の窓を開けたケース1では大量の風が室内に流入している。ただし、風下側しか開けなかったケース2では室内を流れる流量は激減している。通風には、風上・風下の両方開口がまず不可欠であることが分かる。当然ながら、隣に建物があると風は簡単に遮られてしまう。ケース3では風上側の家を15mと大きく離して配置しているが、それでも室内を通過する風量は4分の1程度になってしまう。隣棟間隔が狭い密集地では、垂直方向の通風計画が有効とされるが、吹き抜けと天窓を設けたケース4でも風量の増加は30%程度であり、劇的な効果がある訳ではない。ただし、天井上部にたまった熱の排出には有効である。(図2C)

 通風で重要なのは、まず周辺建物との間隔を十分に取り、その上で風上・風下の両面に開口を設ける「平面計画」であることが分かる。吹き抜けや天窓による「断面計画」による対策は、ある程度有効であるが、「劇的ではない」ことに注意が必要である。

 

 

「適度な期待」をクールダウン

 通風で涼をとることは、かなり好条件の敷地でない限り難しい。密集した住宅地ではなかなか条件を満たせないし、周辺環境の変化にも大きな影響を受けてしまう。「エコハウス」の多くは緑が豊富で広大な敷地に建てられているため見過ごされがちだが、市街地に立てた場合にどうなるのか、想像力をたくましくすべきである。

 暑さの穏やかな夏の初めや終りに通風を利用することで、冷房を必要とする期間を短くすることは十分に期待できる。しかし本当に暑い時期に通風だけで対応することは、どだい無理。どうせ冷房を使うのであれば、必要な空間だけに間仕切った方が効率的。通風最優先の開放的な空間は、効率的な冷房の障害となってしまう。そして何より、第2回で論じたように、冷房の消費エネルギーは暖房の「10分の1」。冷房を少しばかり減らそうとしたばかりに暖房が増えてしまっては、「つじつまが合わない」のだ。

 夏の建築的対策としては、日射の遮蔽・遮熱の方がはるかにローリスクで「手堅い」。通風については、期待ほどほどに、冷静な敷地観察を建物設計が求められる。過剰な期待には早めに「冷水」を。

 

 

 

 

真之:東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授

(日経アーキテクチュアNo.958  P85.より引用)   』

 

 

住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』

 

 

 

 

 


 
Posted by 建築プロデューサー  森 賢一 at 15:28:04
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